ブランド名にフィンランド語を使ったファッションブランド「ミナ ペルホネン」 2015年に創立20周年

フィンランドと私――フィンランドと縁の深い日本人に思い出を語っていただくシリーズです。今回は、ご自身のブランドにフィンランド語を選んだ皆川 明さんです。 

皆川 明さん

フィンランドは人口の少ない国ではあるが、大勢のフィンランドファンに支えられ、日本で独特の地位を築いている。その中には、ファッションブランド「ミナ ペルホネン」を通じてフィンランドに触れる人も多い。このブランドの名前に使われている単語---ミナ(minä )は「私」、ペルホネン(perhonen)は「蝶」の意味---がフィンランド語だからだ。デザイナーの皆川 明さんは、フィンランドに特別な愛着を感じている。ブランド名として、フィンランドの言葉を選ぶほど親しみを感じている理由、それは、初めてのフィランド旅行で感じた心地よさだという。

19歳で初めて訪れたフィンランド

皆川さんの祖父母は、東京で家具店を営んでいた。物心つく前からフィンランド製の家具を見て育ち、フィンランドのデザインに興味を持った皆川さんは、1986年2月、フィンランドの地を踏んだ。当時、皆川さんは19歳。それは、ヘルシンキ中央駅に まだ屋根がなかったころだ。

フィンランド北部の中核都市ロヴァニエミまで電車で移動中のこと。前の席に座っていた双子の女の子たちは、皆川さんのことが気になって仕方がない様子で、しょっちゅう後ろを振り返った。

「たまたま手元にあったマトリョーシカをプレゼントしたりして少し仲良くなって、写真も撮らせてもらいました。あの子たちは、今頃30代ですね」。その時の1枚を、皆川さんは今でも大切にし、著書に用いたこともある。

フィンランド旅行中に皆川さんが撮影した写真

ロヴァニエミに滞在中、皆川さんは図書館に通いつめ、ひたすら写真集をながめて過ごした。一方、ヘルシンキなどでは美術館めぐりを楽しみ、徐々にフィンランドのデザインに親しんでいった。

「フィンランドの方は本当に親切にしてくれました」と皆川さんは言う。「ロヴァニエミで泊まっていたユースホステルの係りの女性は時々食事を作ってくれましたし、電車の中で声をかけてくださった人もいました。一人旅をしていたので、寂しそうに見えたのかもしれませんね。ヘルシンキでよく通ったカフェでも、飲み物をご馳走になったりして、ありがたくいただきました」

フィンランドでの滞在を楽しんだ後、スウェーデンに船で向かうことになっていた皆川さん。たまたま近くを通りかかったまったく見知らぬ男性が車を止め、港まで送り届けてくれたという。

ブランド名にフィンランド語を

初めてのフィランド旅行の後、皆川さんは頻繁に、しかも、たいていは真冬にフィンランドを訪れている。

短期間の滞在の中でも、皆川さんは、フィンランドが平等な社会であることを感じている。「たとえば銀行に行くと、みんな私服で働いていますね。フィンランドには、『これは男性の仕事、あれは女性の仕事』という区別はなく、『ああ、平等なんだな』と思いました」。その平等さこそが、皆川さんの感じる心地よさの源泉のひとつであり、フィンランド社会には階級がないことも影響しているのかもしれない。

ブランドを立ち上げ、いざ名前をつける段になり、皆川さんは大好きな国の言葉を使おうと思いついた。そこで選んだフィンランド語はminä。1995年の創設時はminäとしてスタートし、その8年後にminä perhonenとした。

「私たちにとってオリジナルの生地をつくることはとても大切なことです。生地を作る際には、図案を描き、その図案を生地に表現していきます。蝶の羽の種類は数えきれないほど存在するように、蝶の美しい羽のような図案を軽やかに、無限に作っていきたいという願いが込められています」

皆川さんは続けて言う。「私たちは100年以上続く会社を目指しています。minäという単語は“私”という意味の一人称ですから、誰がデザイナーになっても、minäはその人を指しますよね。それもminäという単語にひかれた理由の一つです」

100年以上続く会社を目指す皆川さんにとって、何かを長い期間、大切に使い続けることは大きな意味を持っている。そのような想いを込めて作ったミナ ペルホネンの服をお客様が長く大切に愛用してくれることを心から願っているのだ。

Artekとのコラボレーション

minä perhonen
ArtekのThree-legged stacking Stool 60とのコラボレーション

今まで何度か、フィンランドの代表的な家具メーカーArtekと一緒に製品を作ったことがある皆川さん。2014年、新たに開発をしたインテリアファブリックを発表した。両面モールスキンのダブルフェイスによるこの生地は、使い込むうちに表面の糸が擦り減ることで、裏面の色が現れてくる性質を持ち、時と共に表情を変える過程も楽しめるようデザインされている。

この生地をArtekの代表的な椅子、フィンランドデザイン界の巨匠アルヴァ・アアルトが1933年にデザインしたThree-legged stacking Stool 60に張り、発表したのだ。無地と2種類の柄にそれぞれ34パターンの配色を揃え、その中からお客様に選んでもらう。座る場所や使い方、頻度によって、少しずつ「熟成」が進み、だんだんと個性が出てくるという。日本で生産されるこれらの生地はフィンランドに送られ、そこで完成品になる。

「数十年使い続けて、親から子、孫にと伝えてもらいたいと思っています」と皆川さんはうれしそうに言った。

「ArtekはStool 60というこの椅子をずっと作り続けています。一人の天才デザイナーの哲学に敬意を払い、そのデザインを忠実に……。時代によって素材や作り方を多少変更したこともあったみたいですけれど、基本は変わりません」

デザイナーである皆川さんにとって、アアルトは尊敬してやまない存在。それゆえに、このコラボレーションは大きな意味を持つ。

ミナ ペルホネン設立後の何年かは、「ブランドの意味は何ですか?」「何語ですか?」と聞かれたというが、それも今は昔。ブランド名がフィンランド語であることはかなり浸透した。むしろ、ミナ ペルホネンによって初めて「フィンランド」に触れる人もいると言えるだろう。

20周年の節目を迎える2015年、ミナ ペルホネンは東京・表参道のスパイラルでの企画展を予定している。

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